学生さんの文章指導方法

実習学生さんの文章指導

1. [はじめに]

2. [同じ助詞を連続して繰り返す ]

3. [同じ意味の言葉を繰り返す]

4. [接続詞間違い]

5. [一文が長すぎて読みにくい]

6. [修飾語間違い]

7. [タイムスリップ…]

8. [予測で仮説]

 

1. はじめに

様々な提出物がある学生さん、デイリーノート、症例ノート、課題、症例レポート、レジュメ…

それを毎日チェックするスーパーバイザー。

「・・・んっ?何のこと・・・うーん・・・何の事じゃー⁇」

ありますよね。

でも、

読みにくい=理解してない

ではありません。

読みにくい文章なのです。文章を書くこつを知らないだけなのです。

それもそのはず、養成校で文章講座なんてありません!
一部取り入れてる学校もあるようですが充分な時間を割けないのが現状のようです。

では、どうしたらよいのでしょう?

自分にできることを精一杯やるだけ。

つまり、自分(スーパーバイザー)が勉強・工夫して少しでもコツを教えてあげるだけ。

早速、具体的な進め方ですが

実習(デイリー)ノートで毎日コツコツと文章を指導するのも良いのですが、始めはレジュメの「考察」が量的に適切だと思います。

しっかり読み込むので、校正に1時間から3時間位かかります。その覚悟でがんばって下さい。

具体的な観察部分は下記のとおりです、

主語は適切か?

修飾語が離れすぎてないか?

一文が長すぎないか?

繰り返し言葉がないか?

接続詞の間違いはないか?

予測で仮説を立ててないか?

あいまい語を使ってないか?

タイムスリップしてないか?

同じ助詞が連続していないか?

同じ意味の言葉が繰り返されていないか?

まずは読みます。読んでいて「ん?」と思ったところは必ず何かしらの上記のような間違いがあります。

文章の書き方本をみますと、よく 「 て・に・を・は 」に気をつける。とありますが、私が13人の学生さんのレジュメを調査したところでは「てにをは」を間違っていたのは2人だけ、しかも合計3箇所しかありませんでした。

それよりもっと多くみられた間違いは次のとおりです、

同じ助詞を繰り返す:25箇所

同じ意味の言葉を繰り返す:23箇所

接続詞間違い:15箇所

複数文の長文化:14箇所

完全に言葉の意味をはき違えている:12箇所

という、順序でした。

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次から間違いが多い順に解説します。

 

2. [ 同じ助詞を連続して繰り返す ]

具体例;  「この症例の関節可動域の制限は、」

この間違いは文章の意味まで履き違えることにはなりません。

しかし、読みにくい。

同じ助詞が連続すると…

さっきのは何だ?

と、読み手は戻ってしまいます。

上記例のように「の」を連続させることは多く、この場合どちらかを削除するだけでスッキリする事もあります。

例を訂正すると

パターン1     本症例の関節可動域制限は、

パターン2     この症例に認められる関節可動域の制限は、

などとなります。

また、「は」「が」が連続するとどちらが本当の主語かもわからずに、読み手はしばらくその文をさまよいます。

提出文章は読み手のために書く。

この絶対法則を指導し、いかに読みやすい文章が大事なのか理解させる必要があります。

 

3. 「同じ意味の言葉を繰り返す」

今ひとつピンとこない方も多いでしょうか?

しかし、13人中11人にみられました。強調したいのか?代わりの言葉が見つからないのか?

早速、実例をみてみましょう。

実例1
在宅復帰条件が入浴動作獲得という事からも早期に入浴動作を獲得し、

実例2
歩行練習時に股関節痛が出現し、歩行練習が思うようにできなかった。

訂正例;

実例1’ 在宅復帰条件が入浴動作獲得である事からも早期に習得し、

実例2’ 歩行時に股関節痛が出現し、歩行練習が思うようにできなかった。

これらの例では分かりやすくするために全く同じ単語にしましたが、単語は違うけど同じ意味の言葉や文が連続していることもあります。

自分で書いた文章に違和感を感じていても、訂正する時間が無いのでしょうね。

もちろん、書いたあとに時間を空けてから第三者的立場で文章確認するよう指導することは非常に重要であります。

 

4. 「接続詞間違い」

[しかし]など逆接の接続詞を間違うことは少ないです。

[さらに]や[また]など前文に追加させる接続詞には謝りが多いです。

理学療法の文章は論理的に書くことを求められます。
よって、説明を加える接続詞や原因を説明する接続詞を使う回数が多くなります。

口語的な[だから]や[なので]は使わせないので、限られた接続詞を多用することになります。

同じ接続詞が連続しないように気をつけるのは当然ですが、接続詞を使い過ぎないことを指導して下さい。

添削していると削除してもよいものが見受けられます。

使用頻度が高い[また]の使い方は個人差があります。

一般的には前文に付け加える文を書くための接続詞ですが、対比させる[または]と同じ使い方をする人も多いです。

ひとつの文章の中で異なる使い方をされると、読み手は混乱します。

対比させる時は「または」を使わせて下さい。

文章中の接続詞は目立つので、文章指導の第一歩としてチャレンジしてみてはどうでしょう?

 

 

 

5. 「一文が長すぎて読みにくい」

言い換えると、7b4596e4c599266158cea32081ee1457_s

「二つとか三つの文が無理矢理ひとつの文にまとめられている。」

と、言えます。

 

具体例:

日常生活動作自立を考えると、靴下が履けないことが問題点になり、股関節の屈曲制限、さらに痛みもあることから自立できていないのは、可動域練習を他動的にしか実施しなかった事やさらなる筋力アップを図らなかった事も要因に挙げられる。

これでも相当がんばってちんぷんかんぷんに長引かせたつもりですが、現実はもっともっと長いですから!

訂正をしますと、

日常生活動作自立を目標に考えると、靴下が履けないことは問題になる。痛みの他に、この原因と考えられる股関節の屈曲制限に対し、他動的な可動域練習だけでなく、自動運動が重要であった。さらに十分な筋力アップを図れなかった事が自立に至らない要因に挙げられる。

何度直してみても、良い文になりません・・・。

相当変えてみましょう。

靴下が履けるようになりたいという本人様のニーズを考えると、股関節の屈曲制限が問題になる。他動的には当然として、自動的にも可動域拡大を狙えるよう十分な筋力をつける必要がある。

こんな感じでしょうか。

まだまだ未熟ですね。

長文になってしまう人の特徴に、箇条書き思考が多い気がします。
発想が乏しい時に、箇条書きは効果がありますが、箇条書きの文を論理展開するのは大変です。簡潔な文をほどいて情報を追加し、それらの文と文をつなぎ合わせて一文にするのでギクシャクした長文になるのです。

それにしても色々なパターンがありますが、解説の途中で私見をはさんでみたり、現象説明の時に介入方法を考えてみたり、様々な混乱ぶりが見受けられます。

 

 

6. 「修飾語間違い」

修飾語は修飾する言葉のすぐ前につける。
主観的な修飾語は使わない。

これらのことを間違った人は13人中8人で計10箇所ありました。

具体例は;

下肢筋力が強く必要である。

→  強い下肢筋力が必要である。

かなり痛みが強く、

→  強い痛みがあり、

こうやって訂正すると、あたりまえに見えますが、読んでいると見つけにくいものです。

読んでいて「んっ?」と思う時は何かしら間違いがあります。

見つけてあげましょう!

直してあげましょう!

 

7.「語意が違う」

次は1番見つけやすい間違いです。

言葉や単語の意味や使い方が違うことです。

敢えていうと、

可動域が広い9ba45ceba4d6bd56931e8faf828e26d7_s
→可動域が大きい

可動域制限が大きい
→可動域制限がある

筋力を良くする
→筋力を強くする

今回、チェックした考察は完成した発表用のものですので、バイザーチェックが入ってます。

初稿であれば、この語意間違いはもっと多いと思います。

これと、誤字を指摘するだけでも満足できちゃいますけどね。

 

 

 

7. [タイムスリップ]56b634f76481f2ba1c243e7fe00dc268_s

その意味の通り、時間空間を自由に移動することで
す。

文字の世界では簡単にできてしまいます。

具体例:

今後も麻痺があるために、転倒に気をつけてきた。

→麻痺があるために、今後も転倒に気をつけなければいけない。

最終評価ではふらつきもなく安定しています、バランス練習を続けました。

→バランス練習を続けたことにより、最終評価時ではふらつくこともなく安定しました。

ここまでくると、間違いはすぐに気がつきますよね。

一文ではなく、一段落や全体を通して時系列を意識していない学生さんもいます。すべての文が時系列にはなりませんが、段落毎には意識をさせると読みやすい文章になります。

 

 

8. [予測で仮説]07654bf11694dd60859c6b674574248c_s

理学療法では仮説を立てて、検証する。答えが異なる場合は再度、仮説を立てて検証する。この繰り返しで治療が進むといっても過言ではないでしょう。

 

よって文章に仮説を立てることは大事なことです。

しかし、予測した事項で仮説を立てるのは無理があります。いくら学生レベルと言っても許されるものではありません。

文章が間違っているのではなく、内容そのものを変える必要があります。

具体例:

長期臥床によって体幹筋力は低下していると考えられ、そのために立位、歩行時のふらつきを認める。

→立位歩行時のふらつきは、体幹筋力の低下が影響しているかもしれない。

この程度の内容の文章にしかなりません。

文章というより考え方を教えてあげると、この文章は削除され全くちがう文章に生まれ変わることでしょう。

気がつかず流してしまいそうですが、この考え方は理学療法士として落第だと思いますので見つけてあげましょう。

 

あとがき

いかがでしたでしょうか?

私自身、文章に自信がないから勉強してみました。

色々な本を読みましたが簡単に説明してくれる本はなかなかありませんでした。

簡単すぎたかもしれませんが、少しでも役に立てればうれしいです。

今野敬貴