臨床実習を知る

スーパーバイザー になるということ。

臨床経験5年で臨床実習のスーパーバイザーとして認められます。特に資格制度はありません。多くの学生さんは単独で実習施設に行きます、そんな不安だらけの学生さんが学習しやすい環境を提供できることがスーパーバイザーになるということです。(追記;今後は講習会参加等スーパーバイザーの条件が変わりそうです。令和元年5月)

5年前の学生という立場から指導者という立場になる。

こう考えているひとは少なくないでしょう。私は「指導」という言葉による勘違いが臨床実習を混乱へと導くと考えます。

指導とは上から下へ行われ、つい「教えてあげる」という態度やニュアンスが学生には伝わるものです。これこそが今までブラック実習と言われた由縁ではないでしょうか?

(令和の現在ではブラックではないのかもしれませんね)

特にスーパーバイザーになりたての場合、一生懸命教えようとして「指導」になってしまうことが懸念されます。

スーパーバイザーを経験することは自分の成長のためにも重要な業務と認識することが大切です。

成人発達理論という分野では「新たな知識やスキルを獲得する際に、他者の存在は極めて重要である」と主張しています。自分より知識・技術が高度なひと、自分と同等のひと、自分より劣るひと。そのどの人たちも欠くことのできない学習環境なのです。当然、実践の場も必須になります。この点においても実習は貴重な成長の機会と言えるのです。もちろん、学生にとっても、バイザーにとっても。

実習を大人の学び舎へ

対象者である学生は成人です。子供扱いは上下関係を生みます。教えてあげるのではなく一緒に学いましょう。

ノウルズが提唱した成人教育、アンドラゴジーとも言う概念では、

 成人は自分たちが学ぶことについてその計画と評価に直接関わる必要がある(自己概念と学習への動機付け)。(失敗も含めた)経験が学習活動の基盤を提供してくれる。成人は、自分たちの職業や暮らしに直接重要と思われるようなテーマについて学ぶことに最も興味を示す。成人の学習は、学習内容中心型ではなく、問題中心型である。

ということである。

つまり、臨床実習も学生を「子供扱い」せずに成人教育と考えるとさらに充実し、一緒に成長できると考えます。

学生さんへ〜実習を受ける心構え〜

理学療法士養成校においては実習は特別な感がありますよね。

自分を担当するバイザーによって大きく状況が異なるのが実習です。

でも現代社会では常識外のことをした方が社会から罰を受けます。ですから怖がる必要はありません。

おかしいなと感じたらすぐに学校の先生に相談しましょう!

実習はテストでも試される場所でもありません。勉強する場所です。目の前には本当に困っている患者さんがいます。

そう、本気で勉強するチャンスなのです。

学校の授業で先生の模倣をする時と実際の現場でバイザーの模倣をする時の本気度の違いは計り知れません。

私は学校でも講義をすることがありますが、実習生の真剣さに比べると学内実習は遊びに近い印象です。

要するに、それほど本気で学べる場所が実習なのです。

ここに私が学生さんに配布している実習に向けての小冊子をアップしておきます。

ぜひクリックしてみて下さい!

           臨床実習伝法帳今野

 実習前の学生さんは要チェック↑

2:1実習を知る!

10年ほど前から取り入れているバイザーもいます。養成校や協会においては臨床実習は学生2人に指導者1人が望ましいとも言われています。

以前から、2:1実習で学生のストレス軽減とバイザー側の効率化が期待できると考えていました。

これまで5組を実際に経験させていただきましたので参考までに。

単独で実習に挑む孤独感からくるストレスは少ないようでしたが、もう一人の学生への気遣いという新たなストレスを生んだようです。当然、目に見えない心強さやすぐに相談できる相手がいることは良いことのはずですが、1人より2人の方がいいという具体的な意見はあまり聞かれませんでした。私が感じたメリットやデメリットは先行文献とともに表1に示します。メリットとして明らかなのはリスク管理が手厚くなることとスピードが早いことでした。人が増えることによって転倒防止、死角の減少によりリスクが軽減されるとともに検査測定の作業分担が可能になることから効率よく終了できました。また、印象でしかありませんが測定項目の決定や目標の設定、問題の抽出等「決める作業」つまり意思決定が早いと感じました。自分で判断して物事の決定する行為は難しく、実習においても隠れストレス因子と考えています。2人の場合意見が合えば決定。違えば話し合い。最後はジャンケン?どちらにしても1人で悩むより早い印象がありました。

メリットは

リスク管理が良好、もの忘れが減少、検査測定が早い、再現実技練習が即時可能、受け身になりにくい、フィードバックが倍、計画性が向上する、チームアプローチの初学になる、省察の入り口

デメリットは

提出物チェックはバイザーが大変、学生との関係性が複雑、学生同士の関係性へ配慮、患者さんへの数的プレッシャー、学生を比較してしまう、学生間の衝突

実際にやって思ったこと
前向き・積極性・挑戦性

私が学生の時には「ここの先生方には負けねーぞ!」というなんの根拠もないカラ元気を持ちつつ顔は笑顔で腰低く。勘違い学生ではありますが、その挑戦性は「積極的」と評価されたのです。今ではこんな勘違い学生はいませんし、いても困ります。理由はなんであれ1人が消極的な場合にはもう一人を褒めます。そうすると褒められなかった学生さんは少しだけ頑張ってきます。すかさず大げさに褒めます。それが自信につながり前向きな姿勢になります。これが1人実習の場合、何をどの程度頑張れば良いのか上手く伝えられず、言われた学生も自分なりに頑張るも努力と合致しないことが多くあります。つまり、もう一人の学生の状況を客観的に捉えることにより自分がどの程度努力をすれば良いのかが理解でき、バイザーの要求にも合致します。このような現象は大人数でも発生しにくいと思われます。やはり2-3名位が適当だと考えます。

柔軟性

対応力とも言えるでしょうか、理学療法士は他人からの意見にも思慮深く真摯に向き合わなければなりません。例えばバイザーの言った指導に反論したり、受け入れなかったりする学生さんは実習が進みませんし、上手くいかないのは明白です。このような学生さんは医師の指示も聞かず患者さんの訴えも聞くことが難しいと判断せざるを得ないのです。また2:1実習では同じ立場である学生さんからの意見にも対応しなければなりません。バイザーや先輩の意見には対応できても同じ学生の意見には対応できない。という事象が生じたことがありました。臨床では後輩からの意見も当然出てきます。そういう大切な意見に対応できるよう学生のうちから経験出来るのは貴重なことだと考えます。

省察

自分を振り返るトレーニング。臨床実習は経験したことない職場環境の中でどのように省察をしていくのかを学ぶ貴重な場所であります。本当の臨床環境で自分の考えや言葉、行動を振り返り考えることがとても重要です。ただ単にレポートや報告をするよりも申し送りやカルテなど自分が実施している内容を公式に伝達する行為の方がより臨床的な経験になります。2:1の場合、学生間での申し送り等が可能になり省察の良いトレーニングになりました。

クリニカルクラークシップをどう捉えるか?

clinical clerkship という名称がやっと一般化されてきたと思うが今後は診療参加型臨床実習と呼ぶことになりそうです。

どちらにしても学生と患者さんがマンツーマンで実施されたこれまでの担当制実習はなくなると考えた方が良さそうです。

では診療参加型臨床実習は見学主体の実習かというとそうではありません。

患者さんとの関わる内容つまり医療行為においてどこまで実施するのかを明確にして実習をすることが重要なのです。

すでに理学療法士協会はその行為水準をほぼ決めております。

私が平成30年度に独自に決めた医療行為水準は厳しすぎました。治療手技のほとんどを見学としたのです。その代わりに学生同士で評価から治療手技を徹底して練習しました。その効果は絶大で、1ヶ月強で触診がバイザーと変わらないレベルになったと患者さんに褒めてもらえました。

具体的な実技練習は、

まずスーパーバイザーが患者さん役のA君に治療(評価)を施します。

それをみていたB君がA君にバイザーの手技を模倣をします。それを体感していたA君がB君に「先生はもっと強いよ」もしくは「押す方向がこっちだと思う」のように具体的なフィードバックをするのです。

その後スーパーバイザーはB君にも治療(評価)してA君がセラピスト役を実施します。

このような実技練習は実際の病院内で行われるだけで本気度が増し充実するのだと考えます。

とても効果的な練習方法です。

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